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​牡羊座のムウ

牡羊座の黄金聖闘士。守護するのは12宮一番最初の白羊宮である。

 

性格は冷静で思慮に長け、その口調や物腰も優雅で柔らかい。

 

黄金聖闘士の中でも最強の超能力を誇る。

​聖衣の修復を担うジャミールのムウ

今でこそ牡羊座の黄金聖闘士として知名度のあるムウだが、作中初期はチベット奥地のジャミールで聖衣の修復を担う「ジャミールのムウ」という立場で登場した。

 

この時点でのムウはまだ黄金聖闘士のひとりという設定ではなかったので、星矢たちをサポートする非戦闘キャラといった位置づけである。


 

銀河戦争で激しく破損したペガサスとドラゴンの聖衣を修復してもらうため、ジャミールに赴いた紫龍の前に現れたのが作中初登場シーンである。

 

(当初はまだその設定が無かったとはいえ)ムウもまた聖闘士であるため聖衣修復は同胞の手助けになるのだが、辺境の地に住んでいるだけならまだしも、その近くに聖衣の墓場(同朋である聖闘士の亡霊がさまよう場)があるのが何とも物騒である。

 

後述するがムウは教皇に懐疑的な立場であったため、聖域からの招集や刺客を遮るにはその様な立地が好都合だったのかもしれない。


 

弟子はアッペンデックスの貴鬼

 

めったに人の訪れない辺境の地で、優雅で上品なムウといたずら小僧の貴鬼がどのような共同生活をしていたのか非常に興味深い。

 


 

聖衣修復の腕は確かなようでペガサスの聖衣は大幅なデザインチェンジが加えられたが、なぜわざわざヘッドギアパーツをダサく仕上げたのかは謎である。

 

(後の聖域編でもムウは星矢らの聖衣の修復を手掛けるが、ペガサスのマスクは通常デザインに近い形で修復されている)

 

ちなみに聖衣修復はムー大陸人の技術で、ムウはその末裔という裏設定もある。

牡羊座の黄金聖闘士として登場

作中序盤のムウは星矢たちのサポート的行動を見せるが、必ずしも明確な味方という立ち位置ではなくむしろ静観者に近い。

 

これは大局的見地から物事を判断するムウの思考の表れだろう。

 

なので当時の読者からは「物事の事情に通じているがあえて動かないキャラ」という認識だったと思われる。


 

ムウの師は前聖戦の生き残りであり教皇でもある牡羊座のシオンである。

 

そのシオンは13年前にサガによって殺され、あろうことか教皇に成りすまされてしまうのだ。

 

弟子であるムウだからこそ教皇がシオンでないと見抜き、その正体がサガである事を薄々ながら感じ取れたのだろう。


 

シオンと同じく天秤座の童虎も前聖戦の生き残りであり二人は刎頚の友である。

 

それゆえかムウは師の友である童虎とも交流はあったようだ。


 

そのムウが牡羊座の黄金聖闘士として作中に初めて登場するのは、童虎が座す中国五老峰である。

 

童虎への刺客としてやってきた蟹座のデスマスクが紫龍と交戦し、最大奥義の積尸気を放とうとする正にその時ムウは現れた。

 

これまでの民族衣装の様な軽装ではなく黄金聖衣をまとっての登場である。

 

「アテナ沙織と教皇(サガ)の決戦近し」の報を携え、その幕開けをデスマスクとの一戦で飾ろうとする余裕をも見せる。

 

デスマスクが撤退したのでムウの戦闘シーンはお預けとなったが、多くの読者に「ムウは只物ではない」という認識を植え付けた事だろう。

 

一番驚いたのはもしかしたら紫龍かもしれない。

 

肝心の紫龍のリアクションは描かれていないが、心の中では「あんた黄金聖闘士だったんかいな!」と突っ込んでいただろう。

究極の小宇宙セブンセンシズ

そしてムウの作中における次なる役目は、究極の小宇宙セブンセンシズについて星矢たちに語る事である。

人間の持つ六感全てを超えた小宇宙の真髄であり、黄金聖闘士はみなこのセブンセンシズを会得している。

それゆえに黄金聖闘士は強大無比であり、読み手としては星矢たちがその黄金に挑む構図によりインパクトを感じるはずだ。

 

ムウは自身の守護する白羊宮で聖域12宮に挑まんとする星矢たちの聖衣を修復し、小宇宙の真髄が何たるかを説いたのだ。

いわば聖域編最初の宮でこの先の戦いにワクワクドキドキ感を盛り込む役である。

 

小宇宙も聖衣も「聖闘士星矢」という作品の支柱要素だが、ムウはその両方に携わる形となった。

冷静な傍観者

​それゆえにアイオリアと意見が対立する事も

聖域編のおけるムウの行動もこれまで通り静観である。

 

正確には、城戸沙織がアテナの化身であり教皇が倒すべき邪悪であるとすでに分かっているが、自身が前線に立つことはせずに星矢たちに任せた形をとった。

 

これをムウは「試練」と称し、アテナの星矢たちもここで負けるようならこの先の聖戦を勝ち抜くことは出来ないという観点からの判断である。

 

ムウ個人の視点から見ればサガは師の仇であり自身もアテナの聖闘士であるので、本来ならば星矢たちとともに12宮を登るべきなのだが、そうしない(作者がそうさせない)のがムウという男の魅力であろう。


 

ムウのこの冷静な立場は時として直情的なアイオリアと意見の対立を見せることがある。

 

サガの正体が判明した時も、ポセイドン編で聖域に留まるように厳命された時も、ハーデス編でシャカを殺したサガ、カミュ、シュラと対峙したときも、行動を起こそうとするアイオリアを制するのは決まってムウだった。


 

聖闘士であると同時に男の美学を行動規範にするアイオリアの判断の方が読者の共感を得るのは当然だが、漫画的都合の面から言えば脇役でありながらトップクラスの実力を持つアイオリアが前線に赴けばほとんどの敵を倒してしまうので、それを制する役としてムウが要るのである。

 

大局的な視点から物事を見渡すムウと、車田美学の真骨頂である男気の象徴アイオリアの対比はイデオロギーの違いによるものなので別に両者の仲が悪いという事ではない。

防御や回避に長けた超能力使い

黄金聖闘士としての強さが謎のベールに包まれていたムウだが、冥王ハーデス編序盤においてついにそれを披露するシーンがやってきた。

 

冥闘士として聖域にやってきたサガたちかつての黄金聖闘士、そして師のシオンと対峙したのである。

 

コスモスペシャルの企画の中でムウ対シャカの戦い予想というものがあり、「この2人が戦えば大地そのものが滅ぶかもしれない」と述べられていた。

 

そのような前評判もあってか、ムウの強さには否が応でも注目が集まるというものだ。


 

優雅で冷静なムウはその戦闘スタイルも落ち着いたもので、防御や回避に長けた印象が強い。

 

テレポーテーションによる攻撃回避とクリスタルウォールによる攻撃反射は作中でも何度か見せており、特に後者はアフロディーテの薔薇やデスマスクの冥界波すらもはね返すほどの堅牢さである。

 

もっとも師シオンにはあっさり解除されたが、NDでも水鏡がシオンのクリスタルウォールを小石ひとつで砕いているので、技の性質を知り尽くしている相手にはあっさりと破られてしまうようだ。


 

ムウ自身が黄金随一の超能力の使い手であるためか、拳で殴りつけるような荒々しいファイトは見せず、光を用いた美麗な技が多いのが特徴である。

 

もっとも美麗な顔立ちに似合わず腕力もそれなりにあるので(デスマスク曰く「やさしい顔してバカ力」)、決して非力というわけではない。


 

ただやはりムウの真骨頂はサイコキネシスにある。

 

冥闘士パピヨンのミューとの戦いがそれを物語っている。

 

両者ともにサイコキネシスの使い手だが超能力合戦はやはりムウに軍配が上がった。

 

その場から全く動かずサイコキネシスだけでミューを圧倒しており、これがムウの得意とする戦い方なのだろう。

デスマスクとアフロディーテを同時撃破!

​だがムウは本当にそこまで強いのか?

ただ、長い間その実力を見せなかった割にはムウの強さが群を抜くほどのレベルではなかったのも事実だ。

 

サガやシャカなど黄金の中でも頭ひとつ抜けた強さには及ばず、せいぜいアイオリアや他の黄金と同じくらいの実力として描写されている。

 

それでも十分強いのだが、隠していた実力が読者の期待値に届かなかったのでやや肩透かし感はあった。

 


 

黄金聖闘士同士の戦いは互角であり千日戦争に陥るという設定も跳ね除け、デスマスクとアフロディーテを纏めて撃破しているにもかかわらずムウがさほど強く見えないのには理由がある。

 

冥界波とブラッディローズを撃たれながらもスターライトエクスティンクションで迎撃し、デスマスクとアフロディーテを消し飛ばしたのだから、描写だけを見ればムウの強キャラ感が醸し出されるはずだが、結果はそうならなかった。


 

まずムウのスターライトエクスティンクションというは大いなる光で相手を消し去る技のようだ。

 

パピヨン戦ではこの技がフィニッシュホールドになっていて、これを食らったミューは絶命したことがシャカの数珠の数からも分かる。

 

ドラクエでいえばニフラムに近いが、冥衣もしっかり破損しているので物理ダメージを伴う消滅技なのだろう。

 

そのスターライトエクスティンクションでデスマスクとアフロディーテを倒しきれていないのだ。

 

ムウ本人は本気で仕留めるつもりで技を放っているのが作中のセリフからも明確である。

 

だが結果として二人は地上のハーデス城に飛ばされただけで、任務失敗に怒ったラダマンティスの手で死界の穴に落とされることで初めて絶命するのだ。

 


 

さらにデスマスクとアフロディーテも表面上は冥闘士だが内実はアテナの聖闘士であったため、演技をしていたという言い訳も立つので始末が悪い。

 

そしてデスマスクはのりP語を話すネタ要素も持ってしまったため、どうしてもムウが「強敵の黄金聖闘士を撃破した」という功績に結び付かないのである。


 

さらにムウは、巨蟹宮を半壊させたシャカの天魔降伏の威力に驚いている。

 

アイオリアのライトニングボルトもそれと同等の威力を持っているのが教皇の間の千日戦争で描かれている。

 

それを鑑みるに、ムウの技は破壊力という面では両者に劣るのだろう。

 

コススぺに載っていたようなシャカとの大地が消し飛ぶほどの戦いを演じる実力がムウにはない事が徐々にはっきりしてきたのだ。

古参キャラのムウ

​出番の終わり

ムウの活躍は事実上パピヨン戦で終わり、その後はアイオリアやミロと行動を共にするシーンが多い。

 

さらにはハーデス城の結界によってパワーダウンしていた影響もあるが、ラダマンティスに手も足も出せずに敗れて冥界に落とされてしまう。

 

冥王12宮編は黄金の活躍の場であるが冥界編以降は星矢ら主役陣の出番なので、ムウの活躍は実質ここで終わりである。

 

そして他の黄金聖闘士たちと共に嘆きの壁で散るシーンは、作品序盤からの古参キャラであるムウの出番の終わりでもある。



 

師シオンと心から語り合える機会が無かったのはムウにとって残念だったかもしれない。

 

まだ幼い弟子の貴鬼に教えを残せないのも心残りだろう。

 

派生作品はいざ知らず原作においては牡羊座の後継者もまだいない。

 

聖衣の修復を担える者もいない。

 

作中において脇役ながら重要な役割を担ってきたムウだけに、彼の不在は聖域のみならず「星矢」という作品においても損失はデカいと言えよう。

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