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​牡牛座のアルデバラン

牡牛座の黄金聖闘士。守護するのは12宮2番目の金牛宮である。

黄金聖闘士の中でも最強のパワーをほこる巨漢。

​聖域十二宮編最初の強敵

白羊宮でムウに聖衣を修復してもらった星矢たち4人は意気揚々と次の金牛宮へ到着した。

そこでいきなり吹っ飛ばされたのである。

小宇宙のかけらも感じずまるで無人の宮かと思われた金牛宮に、その男はいた。

星矢たちもいきなりでビックリした事だろう。

 

2本の角を備えたマスクの下から両の眼を光らせながら牡牛座のアルデバランは堂々の初登場シーンを飾った。

勝手にこの金牛宮を通り抜けることは許さん」というセリフを吐くアルデバランだが、この文句は宮の名称を変えた形でこの先多くの黄金聖闘士たちが口にする定番の言い回しとなる。

 

星矢が流星拳を仕掛け、その隙に紫龍たち3人が通り抜けようと試みるも、アルデバランはびくともせずに逆に紫龍らをはじき返す頑強さを見せつける。

紫龍らが気を失ってダウンしたため、ここに星矢とアルデバランのタイマン勝負が演出さることとなった。

聖域編最初のバトルであるので、主人公の星矢に先陣を飾らせたかったのだろう。

 

そしてこれが黄金聖闘士相手の初めての本格的な戦いである。

星矢は過去に射手座の聖衣を装着してアイオリアと戦っているが、青銅聖闘士として黄金相手に戦うのはこれが初めてとなる。

攻防速の三拍子が揃った黄金の野牛

そのアルデバランも聖域編最初の戦闘を担う以上、はるか格上の強敵として描かれているのはある意味当然だろう。

「青銅相手に露骨なファイティングポーズをとる必要はない」と腕を組む余裕を見せ、尚且つその状態で星矢を圧倒する。

流星拳は通じず、逆に牡牛座必殺のグレートホーンが炸裂。

星矢の体は宮の石壁を何枚もぶち抜いて吹っ飛ばされた。

 

アルデバランの恐ろしいところは、そのパワーは勿論、巨漢キャラでありながらも鈍重ではない点である。

黄金聖闘士はみな光速の動きを身に着けているので当然と言えば当然だが。

腕組みしつつも居合の剣のごとき目に見えぬ速さを誇る攻撃速度、流星拳にもびくともしない頑強さ、そして黄金随一のパワー。

アルデバランは攻防速の三拍子を兼ねそろえているキャラである。

しかも星矢戦の序盤はまるで本気を出していないので底が知れない。

角を折られて敗北を認める潔さ

そのアルデバランから徐々に余裕の表情が消えるのだが、それは星矢の不屈の闘志によるものである。

主人公お決まりのファイトスタイルではあるが、星矢の小宇宙はこの戦いの最中でも大きく成長していくのをアルデバランは感じ取ったのだ。

 

ビッグバンを起こした星矢の攻撃によってアルデバランの居合の構えは解かれた。

そして続けざまに星矢は「黄金の角をへし折ってやる」と告げる。

星矢のこの一言によって、「このバトルは牡牛座の角を折る事で決着する」という明確な形が示されたのだ。

 

傷ついても倒れても立ち上がる星矢に、アルデバランは「黄金12人を凌ぐ聖闘士になるかもしれない」と感じ始める。

それを裏付けるかのように星矢の小宇宙も徐々に大きくなってゆき、ついにはグレートホーンを見切ったのだ。

両者の拳の衝撃で吹っ飛ぶアルデバラン。

ちなみにこれはアルデバランが物理攻撃をまともに食らった唯一のシーンである。

そして体勢を立て直したところを上空から現れた星矢の手刀を食らって黄金の角を折られたのだ。

 

アルデバランは豪快に笑いながら自分の負けを認めた。

サッパリとした男らしい態度であり、これがアルデバランという男の魅力でもあるだろう。

愚鈍で単細胞な性格に描かれることの多い巨漢キャラだがアルデバランはまるで違う。

好感のもてる好漢なのだ。

 

多少の不信感はあるものの教皇側につき、星矢を聖域に歯向かう不届きものと見なしていたアルデバランである。

バトル後半では本当に星矢を殺すつもりで拳を放っているが、それも宮守護の責任感ゆえだろう。

なので、角を折られたとはいえその気になればまだまだ星矢と戦闘を続行はできたはずだ。

 

だがアルデバランはそうしなかった。

「角を折られたら敗北を認める」と口にした自分の言葉を貫いたのだ。

まるで試合を終えて健闘をたたえ合うスポーツ選手の様な爽やかささえ感じる。

 

金牛宮を訪れたムウともフレンドリーに会話をしているシーンがあるが、平常時のアルデバランは結構気さくなのだろう。

黄金の面々の中でも武闘派タイプは何人かいるが、アルデバランはアイオリアほど猛々しくなく、童虎ほどおちゃらけでもなく、豪放磊落といった感じだろうか。

​新シリーズのたびにかませ役にされる不遇なキャラに…

強さの面でも人格の面でも魅力的なアルデバランだが、しかしその後の作中での扱いは決して良いものではなかった。

海皇編ではソレントのかませにされ、冥王編ではニオベに殺されるという不遇ぶりである。

 

ソレント戦は笛の音でパワーダウンしており、その状態でソレント最大奥義デッドエンドクライマックスにも耐えきっているので、アルデバランの格も一応はかろうじて保たれるように見えるが・・・。

アテナ沙織の登場で二人の勝負は中断となったが、聖衣を剥がされ全身ボロボロのアルデバランと涼し気な余裕顔で手傷ひとつ負っていないソレントという対照的な構図があるため、どちらに分があったのかは一目瞭然であろう。

 

しかし冥闘士ディープのニオベ戦は戦闘描写そのものが丸ごとカットされているのが余りにも可哀そうだ。

いやそれ以前にニオベの様な不細工ザコ顔キャラに殺された(実際には相打ち)のが報われない。

しかも魔の香気による不意打ちである。

 

これがサガ、シュラ、カミュの猛攻の前に立ち往生を遂げたというなら格好もつくだろうが、どうやら当時の作者はアルデバランへの情愛がほとんど無かったと思われる。

作者の寵愛はサガやシャカ、アイオリアあたりに注がれているのは作中の扱いを見ても明白だが、そうでないキャラとの描写格差が大きいのだ。

残念ながらアルデバランは後者だった。

 

ソレント戦とニオベ戦の共通点は、不意打ちによりアルデバランが本来の力を出せずに敗れたという事だ。

それを考慮してか、「本来ならば云々」とアルデバランにはやたら他者のフォローが入る。

実力を出し切れれば負けなかったと言わせたいのだろうが、それがかえって憐れみを誘うのだ。

 

この様な不本意な扱いのせいで、本来は実力者であるアルデバランがかませキャラという不名誉な立ち位置に追いやられる結果となった。

黄金随一のパワーを作中で発揮する機会を得られずに退場したのだ。

 

「車田漫画における巨漢はやられ役」という法則があるが、アルデバランはそれを打破できる力と魅力を持ちながらもそこから脱却できなかった。

本人もファンも無念であろう。

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