
琴座のオルフェ
琴座の白銀聖闘士。
その実力は白銀聖闘士でありながら黄金聖闘士さえも凌ぐと言われる。
数年前に突如として行方不明となった事情も相まってか、オルフェは伝説の聖闘士として知られる。
琴の名手であり、戦場においても奏でる旋律をもって数々の必殺技を繰り出す。
ソレントやファラオと並ぶ作中でも数少ない楽器戦闘キャラである。
恋人ユリティースの死とオルフェの冥界行き
オルフェが行方不明となった背景には彼の恋人ユリティースの存在があった。
2人は相思相愛の恋人同士であり、回想シーンを見る限り仲睦まじい美男美女カップルであることが分かる。
しかしユリティースが毒蛇にかまれて落命するという悲劇がおこってしまった。
それを悲しんだオルフェは意を決し、ひとり冥界に赴いてハーデスに謁見、嘆願する。
その目的は死んだユリティースを再び生き返らせることであった。
ハーデスの御前でオルフェは琴を奏で続け、その音色を以て冥王の心を揺り動かす。
「地上に出るまで一度も振り返ってはならない」という制約付きではあるが、見事ユリティースを地上に連れて帰れることになったのだ。
おそらくハーデスにすれば特例だろうが、そこまでこぎつけたのは紛れもなくオルフェの琴の音色である。
前述の制約もギリシャ神話のオルフェウス伝説をなぞったものであり、神話同様オルフェも恋人の生還に失敗してしまう。
場所は第2獄、地上までもう一息というところで謎の光を地上への出口と見誤り、後ろを振り返ってしまったのだ。
結果、ユリティースの半身は石と化してその場から動けなくなってしまった。
背後には、死人復活は悪しき先例とするパンドラと、その命を受けたファラオによる地上の光の偽装工作があったのだが、それを知らぬオルフェは恋人のために冥界に留まることを選んだ。
私情か?
ツッコミどころの多いオルフェの行動
このオルフェの冥界行きには色々とツッコミどころがある。
まずどうやって冥界に行ったのかという疑問が湧きたつ。
一番手っ取り早い方法はデスマスクに冥界波を撃ってもらって黄泉比良坂まで飛ばされることだろう。
勿論これではただの死人になるのでエイトセンシズに目覚める必要もある。
冥界の掟に縛られず生きたままでハーデスの元まで行かねばならないからだ。
オルフェが第八感に覚醒していたかは定かではない。
「愛は強し」を行動で示したのかもしれない。
いずれにしても深く考えてはいけないのだろう。
そして最大のツッコミどころは、オルフェの行動はすべて「私情」であるという点だ。
恋人が死んで悲しいのはまだ分かるが、そこから先の行動はアテナの聖闘士の職務放棄および主君替えである。
いや正確には、オルフェはハーデスの臣下になったわけではなく恩義を感じているだけなので主君替えには相当しないかもしれないが、冥界に留まり続けた事は間違いなく聖闘士としての責任を果たしていない。
星矢と瞬がアテナの危機を伝えた際にも、多少の動揺は見せつつも聖闘士として戦う意志は見せなかった。
聖戦真っただ中のこの態度は擁護不可である。
ファラオとの音色対決
しかし前述の謎の光がファラオの仕業だと判明するや、オルフェはアテナ側へと旗幟を鮮明にした。
つい先ほどまでは「僕はハーデスの恩義がある」と言っていた男が、「一度死んだ人間を生き返らせようとした僕が間違っていた」と何かが吹っ切れたような涙を流し始めたのだ。
もしかしたら「もう少しで恋人を地上に連れていけたのにお前のせいで!」という憤りもあったのかもしれない。
オルフェとファラオの戦いは作中唯一の音色合戦である。
ファラオの魔琴で攻撃的音階の要の弦を断ち切られるも、それを歯を以て繋ぎながら必殺のストリンガーノクターンで勝利した。
この技どういうものなのか作中に詳しい説明が無いので良くわからないが、無数の稲光が走る背景イメージと車田落ちで吹っ飛ぶ相手の描写を見る限り、音色による物理攻撃なのだろうか。
ソレントやファラオのような能力ダウン効果は無いように思える。
アテナの聖闘士としてハーデスを討つ!
この戦いの後、ストーリーは第2獄から一気に冥界の最終地点ジュデッカに飛ぶ。
オルフェは13日に1度ハーデスの前で琴を弾いていた。いわば定期演奏会である。
それを利用して一気に大将首を上げようと試みたのだ。
ハーデスに献上する花を詰めた箱に星矢と瞬を隠しハーデスを討つ機会をうかがうオルフェであったが、この日は折悪しくパンドラのほかにラダマンティス、ミーノス、アイアコスら冥界三巨頭までが列席する事となった。
ここでオルフェはデストリップセレナーデという技を披露する。
琴の音色を聴くものを眠りに誘う技である。
オルフェが言うには、「精神は異次元に雄飛して、数日後に目覚めたとしても自身が眠っていたことにすら気づかない」らしい。
パンドラのみならず三巨頭のミーノスとアイアコスさえも眠らせることに成功したが、これは彼らが戦闘モードでなかっただけの事だろう。
だがラダマンティスだけは日頃からオルフェに不信感を持っていたようで、油断することも無く眠りに陥ることはなかった。
全員を眠らせたと思ったオルフェがハーデスを討つべく玉座に進み出だその時、ラダマンティスによって胸を貫かれてしまう。
瀕死の状態ながらもハーデスの前にたどり着き、オルフェ最後の調べストリンガーフィーネを放った。
琴の弦が相手に絡みついて締め上げ、粉々にするという荒業だ。
劇場版のオルフェウスやアニメの神闘士ミーメが使ったストリンガーレクイエムのイメージに近いだろう。
しかし玉座のハーデスは実体ではなかったためオルフェ決死の覚悟も実らず、逆にラダマンティスの猛攻に曝される事となった。
己の生命が尽きることを悟ったオルフェはラダマンティスをストリンガーフィーネに捉え、自分もろともラダマンティスを撃つよう星矢に命じる。
ハーデスを撃ち漏らしたオルフェにすればせめて三巨頭の1人だけでも討ち取っておきたかったのだろう。
星矢の放った流星拳を食らい、オルフェは「アテナを頼む」と言い残して息絶えた。
オルフェにとってはこれが最初で最後のアテナへの奉公だったのだ。
黄金には一歩及ばないものの
白銀聖闘士としては規格外の強さ
冥界に滞在していたオルフェはサガの内乱には立ち会っていない。
現代のアテナが城戸沙織であることも知っているのかさえ怪しい。
それでも彼はアテナの聖闘士として最期を飾った。
彼なりのケジメの意味もあったのかもしれない。
しかしオルフェの死もむなしくラダマンティスは生きていた。
だがストリンガーフィーネのダメージはラダマンティスといえどもかなりのモノだったらしく、第5獄でカノンと再戦する際には思うように体が動かない程であった。
オルフェにとってはそれがせめてもの救いであろう。
なお「黄金聖闘士をも凌ぐ」とまで言われたオルフェの強さであるが、作中描写を見る限りではそこまでの域には達していない。
せいぜい「黄金聖闘士に迫る」くらいだろう。
だが通常戦闘能力がマッハ2~5の白銀聖闘士としてはオルフェの強さは群を抜いている。
NDの水鏡と並ぶ白銀最強候補の1人だろう。
水鏡もオルフェもともに失踪歴があり、その理由は弟や恋人、つまり自身の大切な人のためである。
反逆者に仕立てられたアイオロスしかり、神の化身と謳われたサガしかり、悪の心を持つゆえに幽閉されたカノンしかり、強キャラは行方不明になる法則でもあるのだろうか。