
天牢星ミノタウロスのゴードン
天牢星ミノタウロスの冥闘士でラダマンティス直属の配下のひとり。
半獣半人ミノタウロスを彷彿とさせる巨体のパワーファイターである。
紫龍最後の戦い
その相手を務めるゴードン達
このゴードンもまた連載打ち切りの影響をモロに受けてしまったキャラである。
初登場時は地上のハーデス城で、後の冥界編への伏線的キャラとしてバレンタイン、シルフィード、クィーンらと共に姿を見せた。
おそらく当初は冥界で主役青銅のひとりと戦う予定だったのだろうが、結果として嘆きの壁でシルフィードやクィーンと共に3人ワンセット的扱いで紫龍の相手にあてがわれてしまう。
冥王編の紫龍は12宮においてはシオンと対峙したり、処女宮でアテナエクスクラメーションをぶつけ合うムウ立ちに加勢したりとそこそこ見せ場はあるが、冥界突入後は氷河と共にカノンの後を駆けているシーンが多い。
メインキャラでありながら冥闘士とのまともなバトルシーンがほとんど無いのである。
なので、エリシオンに向かう前に紫龍にも見せ場を与える必要があったのだろう。
同じ境遇の氷河には三巨頭のミーノスとのバトルが与えられた以上、紫龍の相手もそれなりにドスのきいた相手でなければならない。
しかし三巨頭のラダマンティスやアイアコスはすでに撃破され、残っているのはハーデス城以降これといった出番の無かったゴードンらである。
そのゴードン、シルフィード、クィーンを3人まとめて紫龍にぶつける事で1対3という数的不利な状況を作り出し、この戦いの緊迫感を強めたかったのだろう。
この戦いは冥界における紫龍最後の戦いである。
というより実質最初の戦いに等しい。
第三獄でゴーレムのロックを撃破した以外にこれと言って活躍描写の無い紫龍である。
その鬱憤を晴らすかのように、紫龍はゴードンら3人を相手に必殺技を気前よくバンバン披露する。
クィーンにはシュラ譲りの聖剣、ゴードンには昇龍覇、そしてシルフィードには龍飛翔と大盤振る舞いだ。
ページ数の都合だろうがこの戦いは基本的に「敵が必殺技を放ち、紫龍が反撃する」これをワンセット3回という単純な流れだ。
紫龍反撃シーンが通常攻撃だけでは締まりがないし、かといって毎回昇龍覇でも捻りがない。
なので、聖剣や龍飛翔が組み込まれたのだと思われる。
加えて、この戦いの主眼は紫龍決死の覚悟であるため、その決め技は師の童虎の技である百龍覇で締めくくる必要があったのだろう。
この少し前に童虎ら黄金聖闘士たちが嘆きの壁を破壊するために太陽の光を放ち、そして散った。
その直後のこのバトルである。
漫画的には、美しく逝った黄金らの余韻が残っているこの戦いこそ、百龍覇をフィニッシュブローに据える絶好のタイミングとも言えよう。
ミノタウロスの斧で聖剣粉砕
そしてゴードンの役目は必殺技のグランドアクスクラッシャーで紫龍の聖剣を粉砕する事だ。
聖剣も百龍覇もともに黄金聖闘士の必殺技でその威力も甲乙つけがたいが、ドラゴンの聖闘士である紫龍にはやはり百龍覇の方が似合うし、絵的にもサマになる。
言い換えれば、ゴードンの攻撃は聖剣をフィニッシュブローに使わせないための漫画的措置でもあるのだ。
そのゴードンの必殺拳グランドアクスクラッシャーは紫龍の聖剣を見事に打ち砕いた。
本人曰く「さすがの聖剣もミノタウロスの斧には枯れ木も同様」らしく、紫龍の左手の骨が砕けたようだ。
ちなみにシュラの魂が宿った聖剣は紫龍の右手のはずだが、このシーンで粉砕されたのは反対側の左手である。
単なる作者の勘違いの可能性もあるが、もともとシュラの聖剣は研ぎ澄まされた両の手刀を指すので、強引に解釈するならば、紫龍の右手に受け継がれた聖剣が昇華して左手でも放てるようになったという所か。
このバトル内でも一番最初に放った聖剣は右手と思しき描写もある。
ともあれ、二撃目の必殺拳で紫龍の頭を粉砕しようと試みたゴードンだが、カウンター気味に昇龍覇を食らってマスクを砕かれてしまった。
この時にゴードンの素顔が披露される。
イケメンではないが、前髪を数本垂らしたオールバック気味の長髪で渋めの顔立ちである。
ゴードン個人の描写はここまでで、後はシルフィードやクィーンと共に3人同時攻撃で挑むも百龍覇を食らって絶命した。
ゴードンの攻撃はドラゴンの楯をも砕いたのか?
ミノタウロスの斧以外に特筆すべき描写の無いゴードンだが、実はその必殺拳の威力は相当なものである可能性が高い。
確定描写がないため推論の域を出ないが、ゴードンの攻撃でドラゴンの盾を破損させたかもしれないのだ。
聖剣が砕かれたシーンではドラゴンの盾も一部ではあるが破損しているのが確認できる。
問題はこの盾の破損部がいつ出来たかだ。
紫龍の聖衣の破損状況を箇条書きにすると以下の様になる。
①第四獄のフレギアスに胸部を砕かれる
②ジュデッカ到達時には①以外の破損は特に見当たらない。
③バトル序盤、シルフィード、ゴードン、クィーンの3人がかりの攻撃で肩部分に亀裂が入る。この時点でドラゴンの盾に破損部は無い。
④場面転換で氷河対ミーノス。その決着後再び紫龍対ゴードンら3人。ここからしばしドラゴンの盾の全形がコマ内で確認しづらい描写が続く。
⑤グランドアクスクラッシャーで左手の聖剣が砕かれる。その瞬間は斧と剣のイメージ画像。
⑥その次のコマでドラゴンの盾の下端部分の破損が確認できる。
つまりゴードンの攻撃で盾が砕けたのか、それとも④と⑤の間にドラゴンの盾が破損していたのか、決め手となる確定描写が無いのだ。
紫龍左手首の破損部とドラゴンの盾の破損部は共にグランドアクスクラッシャーの命中範囲に収まるので、状況的にはゴードンの攻撃によって出来た可能性が極めて高い。
しかし残念なことに、確定描写がない以上はどこまで行っても状況証拠に過ぎないのだ。
推理小説ならば犯人に目星はついているが証拠が無いといった所だろうか。
これらの点を鑑みればゴードンは非常に惜しいキャラであるとも言える。
グランドアクスクラッシャーの描写ひとつでゴードンの強さは不明瞭なものとなってしまった。
ドラゴンの盾を物ともしなかったキャラと言えば、シュラやクリシュナのような猛者である。
中ボス的立ち位置のゴードンはその二人に比べるとキャラの格の面で一枚も二枚も劣る。
だが、攻撃力だけにスポットを当てるならばゴードンは上記二人に見劣りしない可能性も残る。
つくづく惜しい。