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​春麗

中国五老峰に暮らす少女。

もとは捨て子であったが天秤座の童虎に拾われ育てられた。

 

黒髪を後ろで三つ編みに束ねている。

 

聖闘士になるべく日本から送られてきた紫龍とは、共に孤児同士という似たような境遇もあってか親密な間柄となる。

ちなみに年齢は春麗がひとつ下の13歳。

紫龍に対して深い愛情を持ち、登場シーンのほとんどで紫龍の無事を祈っている。

聖闘士として戦いに赴く紫龍の立場も理解しつつ、一人の少女として想い人を案じる健気さと純朴さが垣間見られる。

紫龍にとっても春麗は大切な存在であり、青銅主役5人の中では唯一の彼女持ちである。

星矢には美穂やシャイナ、瞬にもジュネという存在がいるが、肝心の男側の気持ちは明確に描写されていないので、公然の恋人関係にあるのは紫龍と春麗だけと言えよう。

銀河戦争では紫龍へのドッキリ仕掛人

春麗の初登場シーンは銀河戦争の星矢対紫龍戦。

紫龍にとっては師である童虎の危篤の知らせを持って日本にやって来た。

もっともこれは紫龍の精神面の甘さを計るための童虎のドッキリであり、春麗はドッキリの仕掛け人というところか。

 

作者の意図としては、紫龍にも「戦う男の理由」を持たせたかったのかもしれない。

春麗を通して老師という偉大な存在と紫龍の修行背景が描けるので、彼女はそのために用意されたキャラなのだろう。

結果としてこの試合は、大恩ある老師のために負けられない紫龍と、姉を探すために勝ち続けなければならない星矢との男と男の勝負を演出する形になった。

 

しかし決着は春麗の予期せぬ形となって現れた。

彼女にとっては悪夢のような出来事だろう。

何しろ目の前で愛する男が死んでしまったのだから。

 

星矢の拳を左胸に受けた紫龍は、その心臓の動きを止めてしまう。

試合の上での出来事とはいえ春麗にとっては受け入れがたい事実のはずだ。

孤児である彼女にとって紫龍は大切な存在であるとともに心の拠り所でもあっただろう。

紫龍無しの人生など春麗には想像できなはずだ。

 

春麗は紫龍を生き返らせてくれるよう星矢に涙の嘆願をする。

聖闘士の拳によって停止した心臓は、反対側から同じ力の衝撃を加えることで蘇生するからだ。

全く見ず知らずの相手に、しかも試合で満身創痍の相手に必死の懇願を繰り返す春麗だが、これも紫龍を思う気持ちの強さゆえだろう。

 

瞬や氷河の助けもあり、星矢の拳は見事紫龍の心臓を蘇らせた。

ドッキリ仕掛人の春麗にとっては絶望と歓喜の両方を味わったことになる。

 

その後、春麗は紫龍と共に入院中の星矢の見舞いに訪れている。

持参の花束を病室に飾り、恋人の恩人の星矢に礼を述べる春麗。

何ともしおらしい。

 

なお紫龍はこの後中国へ帰還する予定であった。

春麗にとっては今回が初来日だったろうし、中国の山奥で質素な暮らしをしてきた彼女にとって初めて目にするであろう日本の様相は珍しい物であったに違いない。

春麗も年頃の少女である。紫龍と異国デートのひとつくらい洒落込みたいだろう。

 

だが一輝率いる暗黒聖闘士の乱入により、紫龍も再び戦いに身を投じる事となる。

そしてここから春麗の忍苦が幕を開けるのである。

戦いの度に傷つく紫龍

​それを心配する春麗

聖闘士として厳しい戦いを余儀なくされる紫龍の無事を祈る春麗だが、当の紫龍は無事とは程遠い状態が続く。

まず白銀聖闘士のアルゴル戦で視力を失ってしまうのだ。

この時紫龍は春麗に連れられて五老峰に帰ったらしいので、春麗が日本まで迎えに来たのだろう。

一度目の来日では想い人が死に、二度目では失明である。

春麗にすればたまったものではない。

だが五老峰に帰った後の数週間は、紫龍は目が見えないながらも田畑を耕し平凡ながらも充実した日々を送っていた。

ひとえに、紫龍は二度と聖闘士として戦わないと誓ったからであり、春麗にとってもしれは喜ばしい事であったはずだ。

しかし喜びの束の間、聖域から童虎討伐のために送られた蟹座のデスマスクの襲来によって、紫龍はまたも戦いに赴くことになる。

春麗は「紫龍は目が見えないから殺されてしまう」と心配するが、あろうことかそれが後に現実となってしまうのだから不憫である。

紫龍への祈りを日夜続ける春麗だが、それが巨蟹宮で紫龍と対峙していたデスマスクの勘気に触れ、攻撃的テレポーテーションで滝壺に落とされ殺されかけるという災難にも見舞われた。

(老師の助けにより春麗は無事であった)

 

その数時間後には山羊座のシュラに紫龍が切り裂かれるという悪夢を見る。

そしてそのすぐ後には、天に昇ってゆく一筋の流星(亢龍覇を使って天に昇る紫龍)を目にし、またも恋人の最期を目の当たりにするのである。

紫龍の義心に心を打たれたシュラが山羊座の聖衣を着させたことで、紫龍は地上に戻り一命をとりとめたのだが、当然春麗にはそれを知る術はない。

ただただ春麗が可哀そうである。

紫龍には戦いに行って欲しくない

聖域編を死と紙一重(正確には一度死んだ)の状態で終えた紫龍だが、その傷も癒えぬまま海皇ポセイドンとの戦いに赴くことになる。

破損したドラゴンの聖衣は童虎が血を分け与えることで新生聖衣として復活。

だが春麗にとってはこれが紫龍を新たな戦いに向かわせる結果になったのである。

「老師や黄金聖闘士を恨みます」という言葉を口にするが、彼女の気持ちを考えればそれも当然だろう。

 

アテナがポセイドンの魂を封じ込めた事で戦いは終わったものの、海闘士クリシュナとの戦いで紫龍は再び視力を失ってしまった。

やっと紫龍と平穏に暮らせるかと思いきや、今度は冥王ハーデスと108の魔星が復活。

紫龍もまたもや聖闘士として戦いに向かう事になる。

 

ハーデスが復活したことにより、前聖戦の時代より魔星監視の役目を担っていた童虎も聖域に向かった。

紫龍もそれを追う形で聖域に向かうのだが、春麗は「行かないで」とその背中に涙で訴える。

育ての親同然の童虎がいなくなり、この上紫龍までも戦いに向かったら春麗は五老峰の山奥に独り残されることになる。

うら若い娘にそれは酷と言うものであろう。

 

だがやはり紫龍は戦いに身を投じた。

春麗はひとり五老峰で祈る。

ハーデスのグレイテストエクリップスにより地上が闇に覆われようとしている中、13歳の娘は健気にも愛する男の無事を祈り続けていたのだ。

翔龍という新たな家族を得て…

ハーデス戦後、紫龍は春麗のもとに帰ってきた。

長き忍苦を耐えてきた春麗にとって、幾つかの喜ばしい事が続く。

アテナの真の敵ハーデスを倒したことによって紫龍が戦う必要もなくなったこと、その視力も徐々に快方に向かっている事、そして何より、山奥で拾った男の子を翔龍と名付け育て始めた事である。

 

童虎はいなくなってしまったが、翔龍という新たな家族を得た春麗にやっと幸せの時間がやって来たのだ。

しかしそれも長くは続かなかった。

冥王の剣の呪いによって余命3日となった星矢を救うべく、紫龍は童虎の形見の杖を手に、「炎の友情」を胸にまたも戦いへ向かう事になる。

 

だが此度の春麗は違った。

これまでの様に紫龍を引き留めることなく、その覚悟を十分に理解したうえで気丈に送り出した。

翔龍を得たことによって「母」としての気概が宿ったのか、その姿も態度も非常に凛としたものだ。

 

何度も述べるが春麗は13歳の若き娘である。

だがこれまでに彼女が感じだ心労は並大抵のものではないだろう。

だからこそ春麗には幸せになってもらいたい。

「紫龍邯鄲の夢」で描かれたような、慎ましくも幸せな一生を送ってもらいたい。

彼女にはその権利が十分にあるはずだ。

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