
鷲座の魔鈴
琴座の白銀聖闘士。
その実力は白銀聖闘士でありながら黄金聖闘士さえも凌ぐと言われる。
数年前に突如として行方不明となった事情も相まってか、オルフェは伝説の聖闘士として知られる。
琴の名手であり、戦場においても奏でる旋律をもって数々の必殺技を繰り出す。
ソレントやファラオと並ぶ作中でも数少ない楽器戦闘キャラである。
星矢に聖闘士の闘法を教えた女師匠
聖闘士候補生としてギリシャに送られてきた星矢を6年間にわたって指導する。
その修行内容はかなりハードで、まだ幼年の星矢に断崖に渡した棒上での腹筋千回を強いるなどの鬼っぷりである。
肉体面のトレーニングのみならず、学校の授業にも似た形で戦術・知識面の指導も行っていた。
その教えの賜物か、星矢が強敵と対峙し苦境に陥った時に魔鈴の教えを思い出し、そこから攻略の糸口を見出すシーンも多い。
破壊の根本は原子を砕くこと、聖闘士の力の源は自分の中にある小宇宙を燃やして爆発させることなど、聖闘士としての基礎もしっかり叩き込んだのは言うまでもない。
魔鈴の指導者としての力は中々のモノで、カシオスとの聖衣争奪戦を見届けていたアイオリアも星矢の成長ぶりに驚いていた。
星矢はその後数々の戦いを勝ち抜いてゆくのだが、その闘法の基礎を担っているのは紛れもなく魔鈴の
指導によるものだろう。
セイヤ アテナを守りなさい
さらに魔鈴の功労はこれだけではない。
「セイヤ アテナを守りなさい」という砂の書置きを残したことで、聖闘士としての道標を星矢に示したのだ。
そもそも星矢が聖闘士になった理由は、生きて日本に帰り姉の星華に再び会うためである。
しかし星矢がギリシャに送られたその日に行方不明になった星華を探すには、星矢個人の力では到底無理であり、グラード財団の協力を仰ぐ代わりに城戸沙織が主宰する銀河戦争へ参加する事となった。
一輝ら暗黒聖闘士の乱入により奪われた黄金聖衣の奪回、そして聖域から派遣されたミスティたち白銀聖闘士との戦いなど、星矢を取り巻く環境は目まぐるしく変化するも、黄金聖衣を取り返したことで沙織に対する義理も果たした形となる。
星矢もグラード財団を当てにせず自分の力で姉を探すと明言した。
言いかえれば、星矢が沙織のために働く理由はこれ以上ないことを意味する。
城戸沙織がアテナの化身だと告白しても星矢は全てを鵜呑みには出来ず、沙織のもとを去りかけた。
ジャミアンら白銀聖闘士の登場で図らずも沙織救出のために奔走する形となったが、その胸の内に魔鈴の砂の書置きが静かに響いていたのも事実である。
アイオリアの来襲時に沙織の口から語られた光政とアイオロスの真実、たとえ一人でも聖域に乗り込み教皇と対決すること誓う沙織の姿に、星矢もまた彼女のもとで戦う事を決意した。
シリーズが進むごとに星矢のアテナに対する使命感は強まってゆき、自身の命を懸けてでも沙織を守る聖闘士として数々の戦いを勝ち抜く。
遡れば、その遠因はやはり魔鈴の砂のメッセージにたどり着くだろう。
ストーリーの背後で星矢をサポートする貢献者
他にも、教皇の正体を探るべく禁断の地スターヒルに独自調査に赴いたり、星矢の姉を探し出したりと戦い以外の面で星矢たちに陰ながら貢献している。
主人公への貢献度は間違いなくナンバーワンだろう。
反して、戦闘シーンはモーゼス、アステリオン戦くらいである。
読心術によって一度は完敗したが、アステリオンとの二度目の戦いでは「聖闘士に同じ技は通じない」を実力で示しサトリの法を無効化、そして必殺のイーグルトゥフラッシュで見事勝利した。
急所を外すよう手加減して繰り出しながらも、星矢戦ではほぼ無傷のアステリオンを一撃KOするのだから結構な高威力である。
なおこの技は、続編のND冥王神話で過去の蛇遣い座復活の余波で正気を失ったシャイナを鎮めるために久方ぶりに披露されている。
魔鈴=星矢の姉?
魔鈴も星矢もともに日本人であるが、これは魔鈴の正体が星華であるという当初の設定のためである。
連載途中に刊行されたコスモスぺシャルに記載された魔鈴と星華のデータが完全一致しているのがその証拠だ。
幼いころに母親代わりとして星矢を見守ってきた星華が実は星矢の師であり、聖闘士としても陰ながら見守り続けてきたという姉弟愛を描くつもりだったのだろう。
それらの伏線はモーゼス戦や薔薇の葬列、リュムナデス戦などにも散りばめられている。
しかし不運にもハーデス編半ばで連載の打ち切りが決まり、取ってつけたように星華を魔鈴とは別人という形で登場させたため、上記の伏線全てが水泡に帰したのが残念である。
それと共に、魔鈴は生き別れになった弟を探しているという設定も未消化のまま物語は終わった。
魔鈴にすれば、姉を探す同じ日本人の星矢に自身の境遇を重ねたのかもしれない。
星華探しも聖闘士の役目とは何ら関係ない事だが、星矢を思うその心は単純な師弟関係を超えたものがあるのだろう。
正統続編のNDでは、天闘士の斗馬と何やら因縁めいた伏線が描かれている。
斗馬と対峙した魔鈴は懐かしさにも似た何かを感じたが、その詳細は今のところ語られていない。