
一角獣星座の邪武
ユニコーンの青銅聖闘士。
城戸光政の100人の子の1人。
ファンの間では星矢たち主役青銅5人に対して、銀河戦争に出場した邪武たちその他の面々は「青銅2軍」と呼ばれる。
何とも不名誉な称号だが、邪武たちの実力は前線で死闘を繰り広げてきた星矢たちとは大きな隔たりを生じているので、そう呼ばれるのも致し方ないと言えよう。
初期構想では主役候補の1人だった
だが星矢とキャラがかぶっている
この邪武というキャラは初期構想では主役候補の1人であったという話は有名である。
なので展開次第では邪武が星矢たちとともにアイオロスの遺書を目にして涙したり、セブンセンシズに目覚めて12宮の黄金聖闘士と死闘を演じる可能性もあったのかもしれない。
しかし運の悪いことに邪武は色々な面で主役の星矢とキャラがかぶっているのだ。
まず守護星座がユニコーンとペガサス。ともに白馬でありその違いは翼と角の有無だけである。
必殺技のユニコーンギャロップは高速キック攻撃なのだが、早い話が流星拳の蹴りバージョンである。
もっともこの技は銀河戦争では未披露だったので、当時はまだその設定は無かったかもしれないが。
勝気で負けず嫌いという性格も星矢とやや通じる部分がある。
2人は孤児であり、他の兄弟と同じくグラード財団に引き取られて育ったが、幼少期の邪武と星矢は何かと衝突していた。
良く言えば喧嘩友達で、共に聖闘士となった両者を自然にライバル関係に仕立て上げるための伏線だったのだろう。
もし邪武がレギュラーに定着していたら「リングにかけろ2」の麟童と伊織のような戦友兼喧嘩仲間のような間柄になっていたかもしれない。
銀河戦争編でも一方的に星矢にライバル心を燃やしていたが、両者が拳を交える機会は無かった。
正確には初登場シーンで一度だけ小競り合いをおこしているが、星矢の強大な小宇宙を目の当たりにして驚愕する結果に終わっている。
ある意味この時点でケリはついていたのかもしれない。
星矢のライバルになれないという事は邪武と言うキャラの存在意義も無くなるという事でもあるのだ。
青銅二軍の中では戦闘力は高い方だが…
銀河戦争では同じ青銅聖闘士の蛮をあっさりと撃破しているから、青銅2軍の中では邪武の戦闘能力は高い方なのだろう。
しかしその強さも所詮は青銅聖闘士の枠の中に収まるレベルであるので、後に次々と現れる強敵と対峙できる実力には程遠いのも事実である。
結局は次戦で対戦した瞬のネビュラチェーンの前になす術なく完敗した。
これを以て邪武のレギュラー化は完全に無くなったのである。
銀河戦争の本来の目的は私闘を演じて教皇(サガ)の注目を集める事と、それを倒せるだけの力を持つ真の聖闘士を見極めることである。
その意味においても邪武は、ストーリ本編に絡む聖闘士になるには不合格だったのである。
沙織への想い
邪武が如何なる目的で銀河戦争に参加したのかは語られていない。
しかし彼は沙織の命令ならばたとえ火の中水の中だろう。
邪武は沙織に対して恋慕とも敬愛とも忠義とも呼べる感情を持っているからだ。
幼少期の沙織の馬遊びに自ら進んで背を差し出すシーンがあるが、これも清らかな乙女のみをその背に乗せるユニコーン伝説になぞらえたものだろう。
沙織がこの時代のアテナの化身だと知った邪武の胸中は如何なるものだったのか。
秘かに想いを抱いていた女性が実は自分が守るべき女神であったのだから、多感な時期の少年には色々と胸に押し寄せるものがあるだろう。
邪武、そして他の2軍4人は銀河戦争の敗北の悔しさを胸に、修行地に再び赴いて厳しい修行を経てきた。
すべてはアテナのためであるが、思うに邪武には沙織個人への想いも幾ばくかはあったのかもしれない。
彼らが久方ぶりにその姿を披露するのは12宮編の半ばあたりである。
黄金の矢に胸を射抜かれ横たわったままで微動だにしない沙織の姿を見た邪武はどう思っただろうか。
邪武の実力では黄金聖闘士の相手にならないのは一目瞭然だが、想い人を直接救えないという歯がゆさもあっただろう。
なればこそ星矢たちに全てを託したのだ。
何だかんだ言っても仲間思い
邪武も星矢も喧嘩ばかりしていたとはいえ、お互い心の底から憎み合っているわけではない。
同じ孤児で、厳しい修行を経て聖闘士になったという境遇も一緒である。
幼少期を共に過ごした昔馴染みのよしみはもちろん、今では地上の平和のために戦うアテナの聖闘士として同朋関係にある。
銀河戦争でも、心臓が停止した紫龍を蘇らせるべく拳を撃とうとする星矢が意識を失いかけた時に「しっかりしろバカヤロー、紫龍を死なす気か」と必死の激励を送っている。
根本の部分ではやはり仲間思いなのだ。
聖域編最終局面でも、サガを前に5感を失った星矢に「俺の命をやる」と他の仲間と共に叫び、まさに命がけのエールを送っている。
仲間の声を力に立ち上がった星矢は決着の彗星拳を放つが、その中には邪武たち青銅2軍の小宇宙も込められていたのである。
青銅2軍もまた陰の殊勲者であり立派なアテナの聖闘士と言えよう。
冥王編の描写を見る限り、邪武たちはおもに聖域の警護をしているようである。
多くの聖闘士が落命したため邪武たちは貴重な戦力なのだが、彼らが前線に立つ機会はよほどのことが無い限り与えられないだろう。
だが脇役には脇役の輝き方があるのだ。
NDではいまだ出番が無く、この先登場するという保証も無いが、邪武には脇役として仄かな輝きを放ってほしいと願わずにはいられない。