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​天貴星グリフォンのミーノス

天貴星グリフォンの冥闘士で冥界三巨頭のひとり。

 

無数の操り糸を駆使して相手の五体を意のままにする技巧派である。

基本口調は敬語なので、同じ三巨頭のラダマンティスやアイアコスに比べると気位が高そうな雰囲気を醸しだすキャラ。

冥界編の強ボスなのに存在感が薄い

冥界三巨頭は108人の冥闘士の中でも最強を誇り、その実力も黄金聖闘士と同等かそれ以上とまで言われる

言わば冥王軍のエース的存在だ。

 

しかし連載中の打ち切りによる影響もあったためか、肝心の作中描写はその設定と乖離したものに終わる。



 

加えてこのミーノスは作中での影が薄い。

 

本来は冥界における強ボス的立ち位置なのだが、その登場シーンが同胞のアイアコスとセットというケースが多いためか、ミーノス単体に当てるべきスポットが不足していた感はある。

 

その点はアイアコスも一緒なのだが、こちらは一輝を圧倒する戦闘力を見せつけた分まだマシである。

 

ラダマンティスも冥王編での登場時期は早く、さらに出番もそれなりにあるので読者の印象には残るだろう。

 

だがミーノスは消化不良の感が漂ってしまう。



 

作中での彼の足跡を辿ってみよう。

 

ジュデッカでのオルフェの琴の演奏会に列席して眠らされ、第5獄でカノン相手に必殺技を披露し、嘆きの壁の爆風に巻き込まれ、氷河とページ数の少ないバトルをこなし、そしてエリシオンへ続く超空間に飲み込まれて消滅するという最期を遂げた。

 

・・・以上である。

 

強ボスでありながらそれに相応しい見せ場がほとんど無いのだ。



 

ミーノスとアイアコスは初登場にはマスクおよび前髪で目が隠れている状態である。

大きい双翼を携えた冥衣に加え、素顔の半分は隠れた状態なので謎めいた大物感はあったのだ。


 

だが登場早々オルフェの琴の音色によって眠りに落とされてしまう。

 

13日に一度のジュデッカでのオルフェの演奏はもはや定期イベントになっていたらしく、パンドラの計らいで三巨頭も列席する流れになったようだ。

 

アテナ冥界侵入の報はこの時点ですでに知れ渡っているので、冥王軍にとっては非常事態の真っただ中である。

それゆえにパンドラは、ハーデスにいらぬ心配を懸けさせまいと平常時のごとく装うよう努めたのであり、三巨頭列席も主君のためを思った一種の芝居である。

 

ハーデス撃破を秘命としたオルフェにとって三巨頭列席は計算外だったが、ラダマンティス以外は文字通りただの演奏会という認識だったようだ。

 

それゆえにオルフェのデストリップセレナーデでまんまと眠らされてしまう。

眠りに落ちたパンドラ、アイアコス、そしてミーノスは完全に油断していたという他ない。

 

冥界最奥部ジュデッカにおいてたった1人の白銀聖闘士に篭絡され、主君ハーデスの命を危険に晒したことになる。

 

実際には玉座に座すハーデスは仮の肉体を待ち焦がれるがゆえの幻のようなものであり、結果としてオルフェの目論見は独り相撲に終わったのだが、その事実をミーノスらは知らない。

 

ミーノスの立場から見れば、自身が眠っている間に主君は落命の危機にあり、それを同僚のラダマンティスが孤軍奮闘して阻止した形になるだろうか。

第五獄で三巨頭揃い踏み!

​しかしミーノスの出番は…

その後、第五獄で双子座のカノンに劣勢を強いられるラダマンティスの加勢という形でミーノスは登場するが、ここでもアイアコスと一緒である。

 

戦場で三巨頭そろい踏みという迫力を出したかったのかもしれないが、先のジュデッカでのオルフェ演奏会のシーンですでにミーノスら3人が見開き2ページで堂々と登場を果たしているので、ややインパクトに欠けるどころか既視感すら伴ってしまうのだ。

 

ミーノスとアイアコスはジュデッカでの不手際もあるので、案外二人とも「ラダマンティスばかりにいい格好させるか」という意気込みもあったのかもしれない。



 

ともかく、ここでやっと三巨頭ミーノスの初戦闘シーンが披露されることになる。

 

アイアコスの技を食らってダウンしたカノンを目に見えぬ糸で宙に持ち上げ、体の自由を奪うというテクニカルな戦技を見せたのだ。

 

そして難なくカノンの指を1本折るのだが、銀河やビッグバン級のスケールでの戦いが多い中、指を折られただけで絶叫する黄金聖闘士カノンの姿には軽い違和感を感じなくもない。

 

もっともデスマスクも足の骨を折られてのたうち回っていたので、黄金と言えども痛いものは痛いのだろう。

 

黄金聖闘士を無力化して操り人形に出来ること自体十分すぎるほどすごいのだが、アイアコスが先にギャラクティカイリュージョン(本人曰く一撃でカノンを仕留められる)という超威力の技を見せているので、ミーノスの繰り出した技は漫画的迫力描写の面で少々地味に見えてしまうのだ。


 

ともかく、ミーノスの操り糸コズミックマリオネーションはカノンは満身創痍に追い込んだ。

 

そしてここでミーノスのマスクの下から両眼が覗く。

 

「ひと思いに首を引きちぎってくれますか」と余裕にして非情なセリフを吐きながら。

 

アイアコスの技が一撃必殺の高威力であるのに対し、ミーノスはじわじわと相手をいたぶりながら止めを刺すスタイルにも見える。

 

コズミックマリオネーションはミーノス自身が死の踊りと形容しているが、NDで前代のグリフォンの冥闘士フェルメールが見せたような操り人形ダンス的描写は特に無い。

というより、過去でも現代でも第三者の手によって途中で技をカットされることが多いのだ。

 

相手の体の自由を奪う実質脱出不可能な技なので、食らった側は自力で振りほどくのは難しい。

漫画の都合上さすがに主要キャラの首を落とすわけにはいかないので、外部からの助太刀によって強制解除するしかないのだろう。


 

ミーノスの糸もその例に漏れず、カノンの首を引きちぎろうとした正にその瞬間、第五獄に出現した一輝の手によってカットされてしまったのだ。

 

そして場の流れが一輝対アイアコスに移行したため、ここでのミーノスの出番はこれで終わりである。

せっかく披露した両目も再びマスクの下に隠れ、ラダマンティスと共に二人の戦いを観戦する役に追いやられた。

 

両者の戦いはアイアコスの勝利に終わるだろうとミーノスは楽観視していたようだが、予想に反して一輝がアイアコスを撃破する。

目の前で同僚が敗死したのをミーノスとラダマンティスはどんな気持ちで受け止めただろうか。

 

弔い合戦をしようにもパンドラの強制テレポーションにより一輝がジュデッカへ飛ばされたため、ミーノスの出番はまたも保留となった。

ストーリーの渦中からはじき出され…

そしてこの間にミーノスにとって不幸なことが起こる。

 

物語の焦点は瞬が冥王であった事、グレイテストエクリップスが迫ろうとしている事、ハーデスの魂を追ってエリシオンへ行く事・・・と目まぐるしく変化する。

 

エリシオンというラストステージが在ることが判明した以上、もはや冥界も冥闘士たちにも作中で果たすべき役割はほぼ無くなった。

 

ミーノスはストーリーの渦中からはじき出される形となったのだ。


 

連載中のこの辺りですでに打ち切りが示唆されたとの説もある。

 

だとすれば作者が考える事は、強ボスキャラでありながら作中での役割はもはや皆無のミーノスをいかにして退場させるかである。

 

そのために用意された舞台が氷河とのバトルなのだろう。



 

氷河もまた冥王編においては役割の乏しいキャラである。

 

他の青銅4人はストーリーに何かしらの因縁があるが、氷河だけは個の役割が無いのだ。

 

冥王12宮編での参戦もラスト間近と遅く、冥界でもカノンの後をついて走り抜けただけである。

 

見せ場らしい見せ場と言えばゼーロスとイワンを倒したことくらいだろうか。


 

つまり、活躍の場を与えねばならない氷河ともはやお役御免と化したミーノスとのバトルは、いわば予定調和にして消化試合でもあったのだ。



 

第五獄でアイアコスが敗れた後のミーノスの動向は不明である。

 

冥界に多数の聖闘士が侵入しつつある状況は、冥王軍にしてみれば落城の危機に直面する守兵のようなものだ。

 

それを何としても阻止せねばならないためミーノスはジュデッカへ急ぎ、カノンの始末はラダマンティスに任せたのかもしれない。



 

黄金聖闘士たちが太陽の光を生み出して嘆きの壁を打ち砕かんとする正にその時、ミーノスはジュデッカに姿を現した。

 

先行していたはずの紫龍と氷河をどこで追い抜いたのかは分からないが、ともかく星矢と瞬を軽々と吹っ飛ばすあたりはさすが三巨頭である。

 

だがミーノスがジュデッカの扉を開けた瞬間、太陽の光で発生した爆風に巻き込まれるという可哀そうな目にあってしまう。

 

さすがにこれで作中より退場する事は無かったが、この後に展開された氷河とのバトルは20ページにも満たない薄い物であった。

消化不良感が漂う氷河戦

第五獄での活躍シーンが僅かしかなかったミーノスにとって、この氷河とのバトルが最期の花の咲かせ所である。

 

氷河の作り出した変形フリージングコフィンをあっさりと打ち破り、ダイヤモンドダストも片手で楽々と受け止める強健ぶりをみせた。

 

氷の基本闘技ダイヤモンドダストが通じないあたりは流石三巨頭といったところだが、黄金聖闘士数人がかりでも破壊不可能なフリージングコフィンをも粉砕するのは凄まじい。

氷河の作り出したのはあくまでも変形氷壁なので、師カミュのそれと同等の硬度があるかは不明だが、ミーノスの基礎ステータスは相当高い事が窺える。


 

そして必殺のコズミックマリオネーションで氷河を捕らえ勝負ありかと思いきや、操り糸が凍気によって凍り付いてしまったのだ。

 

相手の体の自由を奪うこの技だが氷河は凍気の放出が可能だったようだ。

凍気を繰り出すには小宇宙を燃やさねばならない。

 

つまり氷河はコズミックマリオネーションに五体の自由を奪われながらも小宇宙を燃やせる状況にあったという事だ。

 

相手が小宇宙を燃やせるなら当然反撃も可能なため、操り人形に出来ないのではないかという疑問が生まれる。

 

それに関する満足な説明も無いまま、氷河が放ったオーロラエクスキューションをまともに食らってしまうのだった。


 

先の嘆きの壁崩壊の余波でグリフォンの冥衣は所々破損しているが、この氷河の一撃によって半壊しマスクも飛ばされてしまう。

 

だがそれでもミーノスは死なない。

 

かなりのタフさであり、体調不良の身でギャラクシアンエクスプロージョンを食らってもなお生きているラダマンティスと良い勝負だ。


 

さらに操り糸が1本だけ切れずに氷河の体に結びついていたので、ここからミーノスの反撃も可能であった。

 

NDではコズミックマリオネーションには決して切れない主線があるとフェルメールが述べているが、この時のそれがそうだったのだろうか。


 

氷河を討つべく嘆きの壁の先の超空間に身を躍らせたミーノスであったが、次の瞬間信じられない事が多る。

 

冥衣がいきなり砕け散り、彼の体は超次元に呑み込まれるかのように消滅したのだ。

 

そこは神以外の侵入を拒む空間であり、氷河は女神の血を受けた聖衣のおかげで無事だったが、何の加護も持たないミーノスは抗う術もなく消し飛んだ。

 

本人も全く訳が分からぬまま不慮の事故という形の最期となったのだ。




 

冥界三巨頭という肩書を持ち、物語の最終章である冥王編の強ボスという役割を担ったミーノスであるが、それに見合った描写はお世辞にも多いとは言えない。

 

実力はありながらもそれを見せつけるタイミングに恵まれなかったのだ。


 

ちなみに三巨頭の三人はギリシャ神話の冥界三判官がモデルであるが、その役目は主に死者を裁くことである。

 

第一獄のルネはミーノスの代官的存在だが、ミーノス及びアイアコスとラダマンティスにも事務処理に携わる文官的役割はあったのかもしれない。

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